文章能力を上げたい人に勧めている本

仕事をしていて文章能力をどう上げるか?という話になったので、よく人に勧めている本を紹介します。といっても二冊ですが…。

ちなみに僕は正確で密度の高い文章を高く評価しているので1、その好みを反映したチョイスになっています。また、仕事に即使える!系の本は挙げていません2。そのかわり、長期的に力になるであろう汎用性の高い本を選んでいます。

戸田山和久『新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)』

分析哲学の泰斗である戸田山和久さんが書いた論文の書き方の本。必ずしも正解がない問題について一定の解答を与え、その主張を説得力をもって誰かに伝える、という人文科学の論文のフォーマットと手法は3、そのままビジネスに応用できることが多いです。議論の組み立て方以外にも、パラグラフ・ライティング、文章術など参考になる箇所満載です。

スティーヴン・キング『書くことについて (小学館文庫)』

ご存知スティーブン・キングが書いた小説の書き方の本。半分くらいは自伝(さすがに面白い)です。不要な箇所を切り落とした、タイトで伝わる文章の書き方について示唆を得られると思います。文章で結果を出している人だけあって説得力がある。普通に読書としても面白い本です。戸田山本を読んだ後に気分転換に読むのがおすすめ。

おまけ

自分の中での「良い文章」の基準を上げていくのも重要です。ということで、正確で密度の高い文章を沢山読むと良いと思います。読みやすくてコンパクトなそういう本をいくつか挙げて〆ますね…。

伊勢田哲治『哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545)』

現役哲学者が書いたクリティカル・シンキングの本。戸田山本が好きなら絶対気に入るはず。これも人によく勧めています。めちゃくちゃクリア。

筒井淳也『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界 (光文社新書) 』

計量社会学の人が書いた家族論。「ファクトベース」な議論はこうやるのか、というよいお手本ではないか。抑制的な文体がかっこいいです。

多和田葉子 『雪の練習生 (新潮文庫) 』

これだけ小説です。日本語ひいては言語一般の使い手として現在生存している最強クラスではないでしょうか。書かれた言葉が脳に認識される瞬間の感触を楽しんで欲しい一冊。去年ノーベル文学賞の候補にもなっていました。


  1. 「高い」「高く」が重なっているのが非常に気になるセンテンスですね…。

  2. そういうタイプの本、面白くないので読めないんですよね…。

  3. 「説得力がある議論を展開する」を「誰が読んでもわかるように書く」と解釈すると、人文科学と呼ばれているジャンルで括られるものにそうではないものがあるのは事実です。一部の哲学とか。この本の著者がレペゼンしている分析哲学はそこへのカウンター的な要素があって、明晰さをプリンシプルの一つとしているジャンルです。難しいけどちゃんと読めばわかる、って感じ。ちなみにこの本は難しくはないです。